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世界が見えるトピックス 開発途上国レポート

佐々木則夫さんのブラジル訪問~遠くて近いブラジルと日本の繋がり~

3-2 ブラジルの課題解決に向けて

総合的な「防災協力」

一方、日本の専門的な知見や経験も、ブラジルの課題解決に生かされています。
2011年1月にリオデジャネイロ州山岳部を中心に大規模な土砂災害が数100ヶ所で発生し、大きな被害が生じました。これをきっかけにブラジル政府は、防災の知識と経験を持つ日本政府に技術協力を要請し、災害リスク管理をはじめとした防災活動の強化を目指して、初めての総合的な防災協力プロジェクトをスタートさせました。それが統合自然災害管理国家戦略強化プロジェクト(GIDES)です。 。

都市周辺の山の斜面に広がる住宅地では、大雨の際に土砂災害のリスクが高まります。特にこのような地域の防災状況を改善するため、このプロジェクトでは、土石流や土砂崩れ対策を専門とする日本の技術者が現地に派遣されたり、ブラジル人を日本に招聘して防災について学ぶ機会を提供したりしています。
ブラジルでは一般的に、防災に関して記録をとる習慣がなく、またそもそも防災の意識がブラジル人にはほとんどなかったため、プロジェクトによって、学校や地域での防災訓練や防災教育が実施されるようになったことや、災害発生時の緊急ダイヤルを設置したことは、非常に有益だったと考えられます。
プロジェクトに携わるブラジル人からも、「日本の防災を学び、災害前と災害後の活動が明確になった。日本人の熱心さ、期限を守って仕事をするところも大変勉強になった」と話していました。

現地で活動する成戸専門家(中央)から話を聞く佐々木さん現地で活動する成戸専門家(中央)から話を聞く佐々木さん
土砂災害のあった現場を視察土砂災害のあった現場を視察

現地でプロジェクトに従事する専門家、成戸さんにお話しを伺ってみました。

Q:
成戸さんの主な役割は何ですか?
A:
GIDESプロジェクトにおいて市が使用するマニュアルを作成しているのですが、市の人がマニュアルを使う際に出てきた疑問点をサポートすることです。
Q:
活動する中でぶつかった壁は?
A:
多様な立場の人々の連携を図るために、意見を合わせることでした。他には「自助・共助・公助」という考え方がブラジルにはなかったこと。行政だけでできることには限りがあるので、住民を巻き込んで役割分担をできるようになったことは、最初と比べて大きな変化です。

現場視察を終えた佐々木さんは、「日本は自然災害が多く、大変な経験をいくつもしている。そこから培われた精神や技術を世界の国々に伝えていくことは、日本にしかできない国際協力だと思う。成戸専門家は、それらを様々な拠点でアプローチしてくれており、そうした活動がブラジルの人々から喜ばれているということは、とても誇りに思います」と話していました。

ブラジルで進化するKOBAN制度

もう一つ、ブラジルの大きな課題は、治安の改善。
置き引き、スリなどの犯罪だけでなく、拳銃を用いた凶悪事件から市民をどう守るか、その対策が練られています。そしてその役割を担うべき警察官は、かつて市民に暴力をふるったり、時には殺人を犯したりと、過度な取り締まりをするがあまり、逆に市民から恐れられる存在となってしまっていました。
大都会であるサンパウロ州は治安が悪かったため、サンパウロ州政府は地域に密着した警察となるべく、地域住民とのコミュニケーションが密接な日本の交番制度の導入を決定しました。
そもそも日本の交番は1874年(明治7年)に始まった制度で、地域住民の暮らしの安全を守るために、警察官がパトロール、犯罪捜査や少年補導、交通取締り、巡回連絡(家庭や事務所などを訪問する活動)、迷子や酔っ払いの保護、道案内や落とし物の届出を受けるほか、地域住民の困りごとの相談など、いろいろな活動を行っています。
ブラジル政府からの要請により、日本の警察庁とJICAは、2000年からサンパウロに専門家を派遣し、「地域警察活動普及プロジェクト」が開始されました。

現地に派遣されている大橋専門家と掲示板の内容をチェック現地に派遣されている大橋専門家と掲示板の内容をチェック

この日訪れた交番の一つは、大きな公園の隣に位置し、掲示板には、交番からの各種お知らせ、行方不明者の張り紙などが貼られていました。「迷子の犬の張り紙をしたら、遠く離れたところで見つかったことがあるんですよ」と語る地元の警察官は、とても誇らしげでした。
この交番の近所に暮らしている市民の一人は、「治安は日々よくなっていて、日本との協力は素晴らしいものだと感じています。今では住民が警察官の名前を知っているほどコミュニケーションが密になりました」と話します。

専門家として京都府警から派遣されている大橋専門家にお話しを伺いました。

Q:
このプロジェクトでの、専門家としての具体的な業務内容は何ですか?
A:
ブラジルで行われている地域警察活動について、日本での経験を踏まえた現場における助言および指導、ブラジルの地域警察を担当する国家公共保安局に対し、地域警察活動普及のための助言および指導、ブラジルに日本をモデルとした地域警察の理念を広めるための、警察官や市民等に対する講演を行っています。
Q:
プロジェクトに従事する中で、やりがいを感じたり、嬉しいと思うのはどのようなときですか?
A:
日本の地域警察活動を学んだブラジルの警察官が、「地域警察活動こそ、ブラジルの治安を良くする方法である」という強い信念を持ちながら業務にあたり、「治安の改善」という成果を上げていることは、非常に嬉しいです。

交番の視察後、隣接した公園でラジオ体操に参加。
日系人のおばあさん達が準備を整えると、日本と同じメロディが流れてきました。公園が安全になったのも、交番ができたおかげだということです。

ラジオ体操に参加した佐々木さんは、「運動不足を実感してしまった」と苦笑。
そして「日本のように交番と住民が密接に繋がっていて、警察だけでなく住民も一体となって地域を守ろうという意識が感じられて感心しました。ラジオ体操を地域でやるところは日本でも少なくなっているし、地域との繋がり、住民同士の繋がりも弱くなっている。日本が忘れかけている地域社会がここブラジルにあるのではないか」と話していました。

災害対策のプロジェクトを視察して感じたことは、「国際協力」とは、「ある国が持っている専門的な知識や技術、経験を、必要とされている他の国や地域で活用する」ことなのだということです。課題を解決するフィールドが少しだけ移動しただけと捉えれば、「国際協力」について難しく考える必要はないと感じました。(戸田)

日本では当たり前の交番が、こうして遠く離れたブラジルの地で市民の生活を守り、繋がりをより深めているのには大変驚きました。日本生まれの「KOBAN」がこれからでどのように成長していくのか、とても楽しみです。(山部)

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